REPORT2019

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1st LIVE〜まだ偽りでありんす。〜

日程:2019年1月11日(金)
渋谷CLUB QUATTRO

 

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ずっと真夜中でいいのに。が2019年1月11日、渋谷CLUB QUATTROで「1stLIVE〜まだ偽りでありんす。〜」を開催した。2018年6月にYouTubeで「秒針を噛む」のMVを発表。楽曲、ボーカル、映像のクオリティの高さに大きな注目が集まり、(この原稿を書いている時点で)1380万回再生を突破。その後「脳裏上のクラッカー」(510万再生超え)、「ヒューマノイド」(360万再生超え)を発表し、1stミニアルバム「正しい偽りからの起床」はオリコン週間アルバムランキング8位、JAPAN総合アルバムチャート「HOT ALBUMS」3位を記録するなど、その注目度はますます高まっている。ついに実現した1stライブに対する関心も凄まじく、チケットは瞬時にソールドアウト。超満員のオーディエンスの前で“ずとまよ”は、初ライブとは思えない圧巻のステージを見せつけた。

 ステージには、ランプ、ダストパイプ、時計、キッチン用具(おたま、ターナー、泡だて器など)で作れたオブジェが並んでいる。“遠い未来の廃墟にあるキッチン”のような舞台美術よって、現実世界とは違う異空間に誘い込まれる。フロアを埋め尽くした観客からも、”未体験のライブ”を心待ちにしていることが伝わってきた。
 ライブのスタートは、「秒針を噛む」のMV。途中でガラスが割れる音が挿入され、「お手元のメガネをおかけください」というアナウンスが。観客は入場時に配布された紙製のメガネ(視界が遮られる仕様)をかけると、ACAね、バンドメンバー(ギター、ベース、ドラム、キーボード)がステージに登場し、オープニングナンバー「秒針を噛む」を放つ。ワンコーラスを歌い終えたところで、ACAねが「メガネ取っていいよ」と言うと、会場からは大きな歓声が巻き起こる。そのまま3曲を続けて披露。最初はじっくり聴く態勢だったオーディエンスだが、サビで手を上げたり、身体を揺らしはじめ、フロアの熱気も徐々に上がっていく。
 「はじめまして、“ずっと真夜中でいいのに。”です。やっと、やっと今日だなという気持ちがすごい……あ、まず、あけましておめでとうございます」という挨拶から、最初のMCへ。
 「人前でぜんぜん歌っていなかったので、すごく緊張してます。メガネ、ちゃんとかけてくれて嬉しいです。まだ6曲しか出してないんですけど、それ以外の曲もたくさんやろうと思うので楽しんでください」という言葉から、新曲を続けて演奏。緻密なリズムアレンジが印象的なアッパーチューン「ハゼ馳せる果てるまで」(熱帯魚のハタテハゼをモチーフにしているのだとか)、クラシカルなピアノにリードされたエキゾチックなナンバー「フルムーンダンシング」。さらにEveの「あの娘シークレット」のカバーを挟み、ミニアルバム「正しい偽りからの起床」の収録曲「サターン」へ。距離のある恋人同士の心の葛藤、届きそうで届かない思いを描いたこの曲は、ACAねのソングライターとしての才能をはっきりと証明している。彼女自身の16分のギターカッティングを軸にしたグルーヴ感溢れるバンドサウンドも素晴らしい。
 「何が好きか嫌いか、自信を持って言えないところがあって。でも、まわりにどう見られるとか偏見を気にしないで、好きとか嫌いって言えるようになりたいなって、自分に言い聞かせるように作った曲です」という「Dear.Mr.F」(ピアノと歌による切なく、エモーショナルなバラード)からは、“ずとまよ”の多彩な音楽性を体験できるシーンが続く。おたまとフライパンでリズムを叩き、会場からは手拍子が巻き起こったファニーなポップナンバー「雲丹と栗」、ゆったりとしたグルーヴが心地いい「君がいて水になる」。楽曲の幅の広さもまた、ずとまよの魅力だと思う。
 言うまでもなく、すべての中心にあるのはACAねのボーカルだ。地声のままで気持ち良く突き抜ける高音、やわらかく繊細なファルセット、ふくよかな響きを備えた中音域まで、すべての音域がきわめてクリアに聴こえてきて、ピッチもほぼ完璧。何よりも“言葉を伝える”というシンガーにとってもっとも大切な要素をしっかり備えていることが彼女のすごさだろう。初めての本格的なライブとは思えない、ナチュラルな立ち居振る舞いも素晴らしい。照明は暗く、表情はほとんど見ることができなかったが、楽曲を通し、ACAね自信のキャラクターや感情はしっかりと届いたはずだ。
 ライブ終盤、ACAねはゆっくりと観客に語りかけた。
「いろんなクリエイターさんや、手伝ってくれた方のおかげでみなさんに曲を聴いてもらえて、ミニアルバムを出せて、ライブもすることができて。こうして歌って、嬉しいという気持ちを実感してます」「半年前まで、こんなにたくさんの人の前で歌えるなんて思ってなくて。ずっとここにいたいなという気持ちです」

 そしてライブ後半では、「脳裏上のクラッカー」をはじめとするアッパーチューンを重ね、心地よい一体感を生み出していく。「歌って!」という声に導かれ、シンガロングが発生。最後の曲ではシャウトにも似たロングトーンを響きかせ、会場全体から「おおー!」という歓声が響き渡る。自分自身と深く向き合い、心の深淵をのぞくようにして生み出されであろう楽曲は、ライブという場所で空気に触れることで瑞々しい生命力を獲得。それは観客の心をダイレクトに叩き、音楽を介した純粋なコミュニケーションへと結びつくーーこの夜、“ずっと真夜中でいいのに。”はライブ本来の意味をグッと引き寄せるようなステージを体現していた。それはつまり、ACAねにライブパフォーマーとしての天賦の才が備わっているということだ。
 アンコールで彼女は「いつもインスタとかTwitterとかYouTubeでしか会えてなくて。歌ってみたとか新曲とか、コメントもいつも見てます。ありがとうございます」と感謝の気持ちを表明。「ギターのフレーズとかハモリとか、歌詞の解釈とか、細かいところまで聴いてくれて。すごく作り甲斐があるし、これからもよろしくお願いします!」という言葉に対し、大きな拍手が巻き起こった。最後に新曲「眩しいDNAだけ」のMVの一部が公開され、ライブは終了。00年代以降の邦楽ロック、J-POP、ボカロ楽曲の良質な部分をたっぷりと吸収し、独自の感性とセンスを織り交ぜながら創造される“ずっと真夜中でいいのに。”の音楽世界は、ここから我々の想像を超える速さで広がっていくはず。決して大げさではなく、2020年代の音楽シーンを担うポテンシャルを持っていることはまちがいないだろう。


ライター 森朋之

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